探究チャンネルVOL.7、佐野和之さんにお話を伺いました

 

 教育ジャーナリスト中曽根陽子が、さまざまな立場で教育に関わっているオピニオンリーダーにインタビューする探究チャンネル。やりたいことを見つけて、自分らしく生きていくための探究力の育て方について、これからの教育や子育てについて、ゲストをお迎えしていろいろ伺います。

 今回は、かえつ有明中・高等学校で探究的な学びを実践する佐野和之さんをゲストにお迎えした2021年10月8日のVOL.7のお話をリポートします。

 

探究教育にいたるまで

  佐野先生は、前任校で大学受験に向けて生徒たちに勉強させていた時、どんどん彼らの目から輝きが無くなっていくような気がして何かが違うと悩んでいました。
 そこで、探究的な学びを始めたところ、子ども達の変化に手ごたえを感じ、どんどん実践していきました。しかし、急激な変化は教師間のひずみを生み、生徒に悪影響を及ぼすこともありました。そのため、佐野先生は、先生方が自分らしく居られる場造りを目指されます。結果、その波及効果で、生徒にも安心安全な場が広がりました。その後、「新しい学校を作るから参加してほしい」と声がかかり、7年半前にかえつ有明でチャレンジを始めました。

 

かえつ有明中・高等学校って、どんな学校?

 まず、第一声が「一人一人がその人らしくいられる関係性を大切にした学校です。」でした。何でもない会話が対話になるように心掛けているそうです。対話の場は、生徒だけではなく先生方の間にも設けられています。
「自分はそもそもどうして教師になったのか?」「自分のやりたい事って何なのだろうか?」など対話をすることで、先生方が自己の内側に気づき、かつ、それを受け止めてくれる仲間ができます。そして、先生方の間に心理的安全性が広がって、内側のエネルギーを発揮するようになるそうです。それは生徒にも循環して、おもしろい取り組みが増えてきたとのこと。お話を伺っていて、学校全体に良いエネルギー循環がして心理的安全性がシャワーのように注がれている様子が頭に浮かびました。

 

かえつ有明中・高等学校の探究教育とは

 かえつ有明では、中学1年生からクリティカルシンキングをスキルとして学ぶ授業プラス、自分が大切にしている価値観、特に感情の言語化を促すそうです。思いや願いを言葉にして共有し、それを受け取ってくれる仲間がいて、対話が深まります。探究するのに一番大切な事は、自分自身の中にある感情や思いに気づいて行くことです。これを一人で見つけ出すのは難しく、誰かと対話して言語化している時に整理されていきます。心理的に安全な関係性を構築し、聞く姿勢を身に付ける授業を行っているそうです。中学1年生でも対話が深まる授業について、とても丁寧に具体的にご説明くださいました。探究教育のベースとなるあり方をとても大切にする姿勢に感銘を受けました。

 

生徒の様子

 生徒の様子をお尋ねすると「学校に来るのが楽しそう」とのこと。ここで、”探究することを尖らせすぎた新クラス”に在籍する高校一年の男子生徒Kさんがご参加くださいました。Kさんの第一声も「学校はめっちゃ楽しい。」でした。「かえつの新クラスでは、自分らしくいられる。公立中学校の時は、色々なことに積極的に挑戦する子はダサいと思われがちだったけど、この学校にはそれがないから。色々な人が自分の興味のあることにどんどん挑戦する学校なので、挑戦することが好きな私は、自分らしくいられる」と感じているそうです。
 「かえつ愛は誰にも負けない自信がある」と胸を張って満面の笑顔でお話してくださったKさん。とても溌剌といきいきしていて、高校生活を謳歌している様子が画面越しに伝わってきました。

 

大学受験と探究は両立するのか?

 中学入試は全部で4種類あるそうです。そのため「4種類の子が混ざるので、お互いに刺激し、とてもオモシロイ」とのこと。そして、定期テストの結果をみると、どの入試で入ってきた子も成績の分布はバラバラになるそうです。自分の得意を発揮できるしくみが学校にあるので、生徒は、自分の存在を受け止めてもらえます。「自分はかえつにいて良い」というコミット感がうまれると、生徒は確実に伸び、その結果、色々な活動に結びつき、AO入試をつかって大学受験をする子も増えてきたとのことでした。

 

子どもの探究力の育て方

 佐野先生は中曽根陽子の新著『成功する子はやりたいことを見つけている 子どもの探究力の育て方』がご自身の考えと合致し、一気に読んでしまったとおっしゃいます。そして、子どもの探究力を育てるには「子どもが関心をもった事にどれだけ没頭できるか、どれだけ邪魔しないかにつきる。」とのこと。その子が区切りをつけるまで大人はとことん見守る。正に、大人の在り方が試されている。「そうやって育てられた子どもは、大人になった時にエネルギーが内在化していると思います。」というお話でした。

 

やりたいこと

 かえつ有明の取り組みは、今、色々な学校の先生から関心を持たれているそうです。佐野先生は、生徒と向き合った時に「型だけではなく、生徒に預けられるかどうかを試されている」と感じるとのこと。注意をしないと、自分側の恐れや思いを先行して、生徒の内なるエネルギーと違う方に導く手出しをしてしまいます。「まずは、自分自身を振り返り「なぜこういう時に手出しをするのか?」と内省するワークショップや研修で仲間を増やしていきたいです」とのことでした。

 

一番印象に残ったこと

 私が印象に残ったことは、かえつ有明中・高等学校の先生方と生徒の皆さんは自分らしくいられる場を深い対話によって創り出し、心理的安全性の確保された場で、お互いを尊重し高めあう理想的な学校生活を送っていらっしゃると感じました。比較ではなく共創で学校生活を送るため、より良い内なるエネルギーが循環し、オモシロイものが生まれていくのだと思いました。探究学習のベースとなる大切なことを学んだ1時間でした。

 

アーカイブと次回のご案内

 インタビューはこちらからご覧いただけます。ぜひかえつ有明の探究型教育に触れてみてください!

 

 次回VOL.8は、10月22日(金)20時から、とんがった学生(出る杭)の発掘と成長支援、縁作りを行うDeruQui発起人でディレクターの中川郁夫さんをゲストにお迎えします。
お楽しみに♪

 ご視聴はこちらから。YouTubeマザクエちゃんねる